心の平静を保つには技術がいるらしい。その技術を授けてくれるのが本書「平静の技法」。この記事では、本書から学んだ、瞑想で得られる心の変化、メリットについて説明します。

多忙な日々の中で、本当に幸せなのかを確かめる機会がなかった紀行作家のピコ・アイヤー。彼が瞑想に出会い、何を得たかを教えてくれる。心の平静を手に入れたいなら、ただ座っているだけのように見える瞑想を始めてみませんか?精神の動脈の詰まりを解消して、爽快な気分を感じることができるかもしれない。

ピコ・アイヤー
平静の技法 (TEDブックス) 

『平静の技法』はあなたにおすすめ

  • 瞑想ってなんだろう?
  • 瞑想中は何を考えている?
  • 瞑想のメリット・効果が知りたい
  • 心の平静を取り戻したい

「平静の技法」内容

情報へのアクセスと移動こそが最高の贅沢と感じていた紀行作家が、瞑想に出会い、情報から解放されじっと座ることこそが究極の褒賞のように感じられるようになるまでを書いた本。

どの教会にも属しておらず、どんな信条にも賛同していない。ヨガや瞑想にも参加したことがなかった著者が”平静”について語り、問いかけてくる。

著者の心の移り変わりだけでなく、アメリカ企業が実施している「ストレス軽減プログラム」の内容やその効果について、科学的根拠を交えながら解説。

瞑想を経験した著者の考えや生活にまつわるエッセイのようであり、私たちをノーウェア(どこでもない場所)を目指す冒険へ誘う招待状でもある。

各章の終りは写真家エイディス・エイナルスドッティルの写真で飾られている。静かな水平線、グラデーションに滲む空、靄の向こうの山並み。それらはまさに、瞑想中の心の中を表現しているようで、本書を読むだけでも心が落ち着いてくる。

瞑想で幸せになれる?ノーウェアを目指す旅に出よう

じっと座っていることこそが、この世で過ごした61年の間に見付けた「真に深みを持った楽しみ」なのだと、思いがけない情熱を込めて彼は言った。

「ほかの何事も敵いやしないんだ」光が差し込み出した小屋で、コーエンは静かに佇むという行為についてそう言った。

コーエンが言うには、どこへも行かないこと、すなわちノーウェアを目指すことこそが、他のあらゆる場所の意味を実感させてくれる大いなる冒険なのだった。

平静の技法

これらは、山上の僧院で、著者がレナード・コーエン(1934年カナダ生まれ、詩人でミュージシャン。1996年に仏門に入る。)に瞑想について説明されたシーンの数々だ。

じっと座っていることが楽しみ?はじめはどういうことなのか全く意味がわからなかった。

それでも読み進めるうちに、なぜ静かに佇むことで幸せを感じるのか、心の中で何が起こっているのかを追いかけていくうちに、読み終わる頃には今すぐに目を閉じ、じっと座ってみたくなる。

いかに瞑想で心をコントロールできるか、本書に書かれていることを一部解説します。

幸福は筋肉のように鍛えることができる

ウィスコンシン大学の実験で、科学者たちは数百人の志願者の頭蓋骨に256個の電極を装着し、ポジティブな感情を検証するためfMRIスキャンを行なった。

この実験でわかったのは、静かに佇むことを習慣づけている人のポジティブな感情のスコアが、そうでない人の平均値を大きく上回っていることだ。1万時間ないしはそれ以上の瞑想を経験した大勢の人々は、神経学の研究において前例のない次元の幸福に到達していたと結論づけた。

この実験により規格外の幸福を持つことを証明されたフランス人は、のちにダボス世界経済フォーラムで「幸福は筋肉と同じように鍛えることができる」と説明した。また、長時間のフライトを「束の間の隠遁」と例え、説明してくれる。

「その間私にできることは何もないから、実はなかなか解放的ですらあるんだ。ほかに行ける場所なんてどこにもない。だからわたしはただ座って雲や青空を見つめる。全てが止まっていて、しかも全てが動いている。美しいことだよ」。いうまでもなく雲や青空は仏教徒が心の本性を説明する際に用いる例えである。雲が心を過ぎることもあるが、だからと言って必ずしも遮られたその向こう側に青空が存在していないわけではない、青空が再び姿を表すまでじっと座っている忍耐力が必要なのだ。

平静の技法

私たちを形作るのは、経験そのものではなく、それに対する反応である

全てを破壊するハリケーンが街を通り過ぎたとして、それを再出発の機会と捉える人と生涯のトラウマを負う人がいる。彼らを分けるものは彼らの心の反応でしかないと著者はいう。

どんな経験も思考に変換して初めて意味を持ち始める。大切なのはどこにいるかではなく、どう捉えるか、結局全て心の受け止め方の問題だと教えてくれる。

テクノロジー開発者がそれらを制限することの美徳を知っている

アメリカの企業の3分の1が現在「ストレス軽減プログラム」を実施している。

例えばコンピューターチップを製造するインテル社は毎週火曜日に4時間の「沈黙の時間」を設け、300人のエンジニアとマネージャーにメールと電話をやめさせた。それがあまりに好評で、さらに8週間の明晰な思考を促すためのプログラムを開始する。

グーグルのあるソフトウェアエンジニアは「サーチ・インサイド・ユアセルフ」と題した7週間の研修プログラムを運営している。そのカリキュラムは、瞑想が明晰な思考と健康な体だけでなく、感情的知性にも繋がるという科学的根拠を千人以上のグーグル社員に提示してきた。

シリコンバレーの住民の多くが「インターネット安息日」なるものを設け、ほとんどの端末の電源を切り週末を過ごす。これはオンラインでの仕事に戻った際に必要なバランス感覚や方向性への意識を取り戻すためだという。

このように、最新のテクノロジーに制限を設けることの必要性を熟知している人たちには、テクノロジーの開発を手助けした張本人であることもある。世界を加速させた当人たちが、減速の美徳に対してもっとも敏感だったのだ。

とにかくじっと座る。ただそれだけ

瞑想で幸福度が上がることはわかった、では実際にどうすればいいのか。

その答えはあるようでない。

かの雄弁な僧侶、トマス・マートンは言った「思索の道は道ですらなく、それを辿っても見つかるものは何もない」つまり、思索や幸福の追求という確固たる目的を持っていてはいけないという。これがじっと座る際の鉄則。

何かを考えるでもなく、目的を持つでもなく、じっっっっっっっっと座る。

ただ、それだけ。

瞑想をやってみた

ただ座れと言われましても。。。ということで、youtubeで「おうちで座禅」という動画を発見したので、その手ほどきに従って10分座禅から始めてみました。参考にした動画はこちら

座禅の組み方。呼吸の仕方などを教えてくれた後に、美しい枯山水庭園を眺めながら10分間の座禅タイムを用意してくれています。テクノロジーや情報から解放されるための方法をyoutubeで探すのは本末転倒かとは思いましたが、最初だけです。

ざっくり座禅のポイント

  • 姿勢を正して座布団に座る
    • あぐら、できる人は反対の太ももに足首を乗せるように足を組む
  • ゆっくり鼻呼吸
    • 1分間に3−4回深く呼吸する、長く「吐く」ことに集中する
  • 呼吸と一緒に数を数える
    • 1〜10までカウントしたら、また1から繰り返す

全ての意識を呼吸に集中させる。それを続けるだけ。が難しい。10分だけでも慣れないうちはそわそわします。繰り返すうちに、それがあっという間に感じる瞬間があり。ちょっとだけ、瞑想により「心が落ち着く」という状態を感じることができました。

慣れてきたら時間を伸ばしていきます。何日か続けると、癖になっていくのを感じて、ふとした瞬間に思う「瞑想したい」。

日常生活で感じる変化は仕事や勉強の集中力が切れた時。「もーだめだ、一旦休憩」と簡単に離脱していたのが、瞑想時間を伸ばしていくうちに、もう少し、後ちょっと、と終わらせたかった作業を予定通り完了するまで続けることができるようになった。一度どこかに飛んで行った集中力を意識的に引き戻せるようになってきたと感じます。

座っていることこそが、幸せ。とまではいきませんが、瞑想を続けることで人に変化が起こり、心をコントロールできるようになる。ということが体感として理解できるようになりました。

まとめ

  • 瞑想をすると幸せになり、明晰な思考、感情的知性を手に入れることができる
  • だが、瞑想に確固たる目的を持ってはいけない
  • じっと座る。ただそれだけ

今回の記事では「平静の技法」で説かれている瞑想のメリット、得られる心の状態について説明しました。

これまで書いてきたことを本当に理解するには、実際に瞑想を経験してみるしかありません。

修行僧のように山奥の僧院で座禅を組むのは難しくても、自分の部屋の中で、じっと座ってみるところから始めてみてください。

ピコ・アイヤー
平静の技法 (TEDブックス) 

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