星新一の存在をもっと早く知っていたら、読書感想文の選書に悩まなかったのに。「読書感想文、何読もっかなー?」と考えているあなたに星新一の代表作「ボッコちゃん」から読書感想文が書きやすいテーマを持ったお話を紹介します。

星新一
「ボッコちゃん」

「ボッコちゃん」はとにかく短く面白い話を読みたいあなたにおすすめ

  • 読書感想文の選書に迷っている
  • 普段あまり本を読まないが読書に挑戦したい
  • 短くて面白い話なら最高

「ボッコちゃん」内容

 「ボッコちゃん」は著者自身が作品のバラエティを多くするよう心がけ選んだショートショートのベストセレクション。

 ページをめくる度に見たこともない新しい世界をみせてくれる自選短編集。ミステリー、SF、ファンタジー、寓話、童話なんでもありだ。
 その上、特定の国、時代、流行や風俗現象が登場しないので、読んで理解するのに特別な知識が必要ない。どの国の歴史も文化も常識も、何も知らなくても、何歳でも星新一を読んで新鮮に面白いと感じることができる

こんなに短いのに

 見たこともないような機械が登場するSFも、全く新しい常識が機能している社会も、この短い文章の中に収まっていて、私たちの価値観をグラグラ揺らす。

金策に困るサンタクロース、弱々しい悪魔、無能なスパイ、親切な宇宙人、同じくらい当たり前に存在して、それぞれ勝手に行動する。それがどんなに身勝手なことでも、残虐なことでも、非常識なことでも。

こんなに読書感想文に適している本はない。

 短く読みやすい上に哲学的。多くを語らないラストには読者が考えさせられる余白がたっぷり含まれているので、とにかく感想を書きやすい。読書感想文の1行目はこれで決まりだ。

 たくさんあるストーリーの中で一番印象的だったのは、

はい!この一言入れておけば、文庫本20ページ未満のお話を読むだけで作文にとりかかれる。

何をしたかは書かれているけど、それがどういうことかは定義されていない。読者の解釈に任されている。誰がいい人?何が悪いこと?どっちが常識?どれが正義?人間が幸せになるための条件ってなんだろう?と考えさせられる。

ストーリーは短いのに、考察テーマが無限に広がる本書。読書感想文の課題図書にいかがですか?

 お笑い芸人の霜降り明星が自身のYOUTUBEで星新一を取り上げていた。大好きな芸人さんが自分の知っている本の話で盛り上がっているのを観るとすごく嬉しい。「ボッコちゃん」収録の「おーい でてこーい」、「午後の恐竜」収録の「午後の恐竜」、「ようこそ地球さん」収録の「処刑」の話をしていて「知ってる!そうそう、そうなんだよねー!」と思い、「ボッコちゃん」を再読しました。

読書感想文におすすめストーリーをピックアップ

おーい でてこーい

総ページ数:7p

 こちらは霜降り明星が自身のYOUTUBEでも話題にしていたストーリー。

 偶然発見された底なしに深い穴。どこまで深いのかわからないが、それは次第に産業廃棄物を処理したり、機密書類を捨てたり、あらゆる汚物を廃棄するために使われ始めた。どれだけゴミを捨てても穴はいっぱいにならない。

が、ある日その穴の出口が判明して。。。

 官庁は、許可を与えた。原子力発電会社は、争って契約した。村人たちはちょっと心配したが、数千年は絶対に地上に害はないと説明され、また、利益の分配をもらうことで、納得した。

星新一「ボッコちゃん」

テーマ:環境汚染、SDGs

このお話のテーマは、今まさに世界中で騒がれているSDGsそのものだ。何も考えずに自分たちの都合の良い環境を作ってきたツケが今の私たちの生活を脅かそうとしている。

エコバックを使用している、メルカリで古着を買ったことがあるなど環境に配慮した活動をしたことがある人なら体験談と一緒に、自分たちが生きる世界のこれからの環境の作り方について読書感想文を書いてみてはいかがでしょう?

生活維持省

総ページ数:12p

新たな政府の方針によって優雅で美しく平和な世界が実現していた。強盗や詐欺あらゆる犯罪がなくなり、交通事故もなく、自殺をする人もいない。たった一つのルールを除けば、完璧な生活が約束されている世界。

生活維持省に勤める二人の仕事を追いながら、唯一の必要悪が明かされる。

「必要悪はもはや悪じゃない。それをなくそうとしたら、すべてがたちまち混乱の昔に戻ってしまうじゃないか」

星新一「ボッコちゃん」

テーマ:政治と常識

このお話に出てくる世界の秩序を保つ唯一のルールについて。本当に?と疑問に思わない人はいないはずだ。

こんなこと現実には絶対に起こり得ないとは思っていても、緊急事態宣言やら、外出自粛やら、政治家の決定により私たちの自由がこんなにも簡単に犯されることを身をもって体験した今となっては、人ごととは思えない。

大多数の快適な生活のために、特定の少数の人間の自由を簡単に奪う。飲食店や百貨店が置かれている状況とかさねれば、書きたいことが湧いてくる。

特許の品

総ページ数:6p

 草原の真ん中に突如現れた物体。どうやら地球外からやってきた何かの設計図のようだ。なんとか設計図通りに試作品は完成し、使用してみることに。

それらは人に快楽をもたらし、皆が夢中になった。

悪影響は発見されなかった。麻薬類と違って有害な副作用もないのだ。何人もが試みたが、みな、例えようもない快楽に楽しんだ。

星新一「ボッコちゃん」

そんなある日、設計図の落とし主が現れるが、地球での製品の使い方を知り、特許料を請求せずに帰っていった。

誰もが夢中になる製品の本来の使い道とは。。。

テーマ:スマホ、SNS、youtube、娯楽製品

誰もが求める特殊な装置。形は違えど似たようなものが現代にも存在するかも。と思う。
一日中youtubeをみているとか、SNSを頻繁にチェックしないと落ち着かないとか、そんな経験がある人にぜひ読んでほしい。

皆が楽しめ、やめられなくなってしまうエンタメがスマホの中に溢れていて、それらはいかに私たちから時間を奪うかを考え抜かれて設計されている。

楽しいだけ、人体に無害なようで、実は。。。際限なしに提供される娯楽製品との関わり方を考えさせられる。

実は私たちの身近にもすでに”特殊な装置”は存在してるかも?その理由はこちらの記事から

まとめ

星新一の魅力と、「ボッコちゃん」のおすすめストーリーを紹介しました。

どれも短い上にテーマ性があって読書感想文が書きやすいこと請け合い。

ちなみに、短編のタイトルにもなっている「ボッコちゃん」は接客上手で美人なバーのロボットと彼女に熱を上げた客の悲劇のお話なので、たぶん感想文には向きません。

あしからず。

星新一
「ボッコちゃん」

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