社会人が限られた時間の中で知識と教養を身につけるための読書術について書かれた「大人のための読書の全技術」。本書の中で社会人が読むべき50冊が紹介されている。中でもこれから社会に出て行く大学生に読んでほしい10冊をピックアップしてご紹介。差異が価値を生む時代、ベストセラーのビジネス書はもちろん、世界の歴史、アートや文学など教養を身につけておきませんか?なるべく小難しい本を避けて読みやすく、面白く、実生活に役立つ本ばかり。5つのジャンル(ビジネスマンの志と条件を知る、日本を知る、人間を知る、クリエイターの思考を知る、日本人の文学・アートを知る)ごとに2冊づつご紹介します。

齋藤 孝
「大人のための読書の全技術」 (中経の文庫)

「大人のための読書の全技術」知識を吸収するための読書術を知りたい人におすすめ

  • 社会人の正しい読書術を身に付けたい
  • 積ん読状態の読みたいビジネス書がたくさんある
  • 本書の速読、精読について「無駄なページは読まない。忙しい人の読書術」はこちらで解説しています
大人のための読書の全技術 読書術 本のpop

ビジネスマンが持つべき、志と条件を知る

新一万円札の顔。「日本資本主義の父」は何をした人物?

渋沢 栄一「論語と算盤」(角川ソフィア文庫)


 「日本資本主義の父」と言われている渋沢栄一の著書。実業家として成功を納めた彼の「論語を使って事業をしよう」という教えが詰まっていて、哲学と経済をどのように組み合わせて働くべきかを教えてくれる。

 24年度から一新される新一万円札の顔になることからも、彼が何を伝えたのか知っておく必要があります。

実業家として大成功を収めた人物が、自分のバックボーンを公開しているのです。社会人が読んで役に立たないわけがありません。

“できる人”のセルフ・マネジメントの大原則を知る

P・F・ドラッカー「ドラッカー名著集1 経営者の条件」


 ドラッカーは「マネジメント」が有名ですが、こちらもおすすめ。セルフマネジメントの大原則を「8つの習慣」として紹介。成果をあげる考え方、強みを活かす方法、時間管理などなど。どんな人にでも役に立つ自己啓発の名著です。

会議をしたら、終わってすぐメモを書いて全員に届ける、というようなやり方を私も取り入れることにしました。他にも、上司が、君の時間を無駄に奪っていないかというふうに聞くとか、そういうことを学びました。

これまでの日本、これからの日本を把握する

これまで日本が歩んできた歴史を見つめ直す

網野 善彦「日本の歴史をよみなおす (全) 」(ちくま学芸文庫)


 日本の歴史学に数々の新たな視点を持ち込まれていて、歴史の教科書で学んだ日本とは違う姿が見えてきます。農業中心の社会だったと思われがちですが、実際には漁業、商業も大事だったとか、文字や貨幣の存在がどのように日本に影響を与えてきたかなど、歴史の見方が広がる一冊です。

日本史の本の中で、専門的で、なおかつ読みやすく面白い本はどれかというと、真っ先に挙がる一冊が、この本でしょう。

日本でこれから何が起きるかを知り危機感を高める

藻谷 浩介「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」 (角川新書) 


 2010年に発行されたベストセラーですが、語られている内容、経済はほどんど人口の波で決まってくるというのは普遍の事実ではないでしょうか。今後少子高齢化が進む日本で何が起きるのか。どのような対策が必要かが示唆されています。

人口論の古典的名著に、マルサスの「人口論 (光文社古典新訳文庫) 」がありあます。そちらも、ぜひ読んでみてください。

人口論 (光文社古典新訳文庫) kindleunlimited対象書籍なので、30日間お試し期間中に無料で読むことができます。対象書籍は随時変更になることがあるので、興味のある方はお早めに。

幸せに生きていくために、人間の心と脳の仕組みや限界を知る

私たちの脳はどんな性質を持っているのか?

池谷 裕二「進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線」


 脳について中高生と語る形式の本です。とにかくわかりやすく、取り上げられたテーマが興味深い。著者自身が「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と語るほどの名講義。

 光の三原色について、赤、緑、青の3色があれば世の中の全ての色が作れる。そう教わりましたよね。しかし人間の目の網膜からこの3色に対応した色細胞が見つかりました。つまり、たまたま人間に3色を認識する組織しかなかったということ。世の中の普遍的な仕組みと思っていたことが実は人間の仕組みからできたものだったと教えてくれます。

池谷さんの本を読むと、最新の脳科学の知識が得られるだけでなく、科学的知識の活用の仕方や論理的思考法の練習にもなります。

人の心を学び実生活に活かせる心理分析法を知る

渋谷昌三「面白いほどよくわかる!心理学の本」


 心理学全般の知識をわかりやすい図解で解説してくれます。名前は聞いたことあるけど何を言ってる人だっけ?な心理学者フロイトやユングなどの理論から、職場での人間関係、脳と心の関係、心の病、夢分析まで。

 索引が細かく読みたいポイントにすぐにアクセできるのもポイント。実生活に直結した内容も多く、知っていれば必ずどこかで役に立つでしょう。

図解シリーズの本がけっこう好きです。体系的に知っておきたい学問分野を短時間で学んだり、おさらいしたりするときに、とても便利だからです。

そして、社会人であれば、心理学が全体的にどうなっているのかというのは、知っておくべきだろうと思います。

「面白いほどよくわかる!心理学の本」kindleunlimited対象書籍なので、30日間お試し期間中に無料で読むことができます。対象書籍は随時変更になることがあるので、興味のある方はお早めに。

クリエイターの思考をたどる

デザイン業界の第一人者がブランドをデザインする方法

「新1冊まるごと佐藤可士和。」[2000-2020] (Pen BOOKS)


 その名は知らなくても必ずどこかで彼のデザインを目している。と言っていいほど佐藤可士和さんのデザインは街中に溢れています。キリンビールの「ラガー」「極生」、ユニクロ、国立新美術館など。デザインとは?ブランディングとは?一流のアートディレクターの仕事から物の見方、考え方を学べます。

本書内では「すべてをブランドとして捉えれば一緒。車も炭酸飲料も書籍も、世の中でどういうアイコンとして見えるかを考えていく」という発言もあります。佐藤さんはそのように考えることで、あらゆるジャンルの商品、ブランド、企業をデザインしてきたわけです。

世界中に認められた日本の漫画が生まれる現場を知る

門倉 紫麻「『週刊少年ジャンプ』40周年記念出版 マンガ脳の鍛えかた」 (愛蔵版コミックス)


 ジャンプの人気漫画家37人のインタビュー集。「週刊少年ジャンプ」の執筆陣の仕事の流儀が学べます。鳥山明さん、荒木彦摩呂さん、尾田栄一郎さん、誰もが知る歴代オールスター漫画家が大集合。

 そんな彼らのキャラクター設定、セリフの作り方、使用している道具などを通して現場で起こっていることがわかります。

秋元治さんがなぜこんなにも長い間、マンガ界のメジャーリーグで活躍を続けてこられたのかなど、中高年の必須の教養だとは思いませんか?

日本人の画家、俳人を語れるようになる

有名画家たちに学ぶセルフ・ブランディング

藤田 嗣治「腕一本・巴里の横顔」 (講談社文芸文庫) 


 藤田 嗣治はエコール・ド・パリを代表する画家の一人として世界的に知られています。これは彼が書いたエッセイ。腕一本でパリへ渡りどのように独自の画風を手に入れ大成功を納めたか、また、当時のパリの画家たちとの交流が記されています。

 ピカソが貧乏な時代に友人たちを使って画商に自分の名を売り込んだ方法。飯を煮るために絵を燃やした貧しい生活。マチスが教えてくれたモデルを全裸にしてしまうテクニック。今では当たり前に美術館に展示されている画家たちもただ絵を描いて成功した訳ではないとわかります。どのように作品を制作し、自分を売り込み、独自のブランドを確立するか、現代の社会人にも学ぶところが大きいです。

グローバル化が叫ばれる現代において、日本人が海外に進出した際に、何を武器にして戦えばいいのか、その戦略的思考を藤田嗣治は教えてくれるのです。

世界を見つめる感性を磨く

小林 一茶「一茶句集 現代語訳付き」 (角川ソフィア文庫) 


 15歳で故郷柏原を離れてから50歳で帰住するまで全国各地を旅した一茶。自選句集、紀行、日記などに残された約20000句の中から1000句を厳選し配列。現代語訳に加え、文化的な背景と言葉の由来なども解説している。当時の日本の生活、価値観や思想を理解することができる。俳句や和歌など日本の文化は教養として身につけておきたい。

 雀、蛙、子どもなどが登場する句には現代にも共通するシーンがあって、「なんかすごい俳人でしょ?」と思っていただけの人が意外に身近に感じられる。森羅万象に呼びかける一茶の句は、慈愛やユーモア、正義感にあふれている。

なぜ小林一茶をおすすめするかというと、小さいものに対する眼差しの存在です。小さい生命に共感するというのは、とても大切な感性だと思うのです。

齋藤 孝
「大人のための読書の全技術」 (中経の文庫)


 以上、大学生におすすめの10冊を紹介しましたが、いかがでしたか?本書では社会人が読んでおくべき50冊を紹介しています。どれも興味深いものばかり、どんな本を紹介しているのか確認してみてください。全く縁のなかったジャンルも、わかりやすくて面白い本から学び始めると意外と楽しめることがあります。本書の50冊はどれも知識や教養の幅を広げるきっかけになること間違いなしです。是非。

本書の速読、精読について「無駄なページは読まない。忙しい人の読書術」はこちらで解説しています