悩める男も女も、1度パラパラとこの本をめくってみてはいかがでしょう?GoogleもSiriも見つけられない答えに出会えるかもしれません。
開高 健
「風に訊け ザ・ラスト」 (集英社文庫)
あなたにおすすめ
- 誰に相談したらいいのかわからない悩み、疑問を抱えている
- 男心がわからない、女心がわからない
- 「布団とベッド」どちらにしようか決めかねている
- 仕事のストレスで酒を飲みすぎ、アル中になるのではないかという不安を抱えている
- とにかく、悩める若者のすべて
雑誌「プレイボーイ」で連載された人生相談コーナーをまとめた本
昭和57年6月から雑誌「プレイボーイ」で開高健が担当していた人生相談コーナー「ライフスタイル・アドバイスーーー風に訊け」をまとめたもの。
質問者は20代の若者が多い。芸術、戦争、政治、恋愛あらゆるジャンルの質問に小説家で紀行作家、さらにコピーライターの彼が回答している。全てまっとうな回答だったわけではなく、むしろ読者の意表をつく回答が一つの読み物として魅力的だったりする。
掲載されていた雑誌の性質上、性にまつわる質問も多く、オブラートに包むつもりはさらさらない猥談や、今となっては考えられない価値観の回答がありのままに詰まっている。
それぞれの回答は面白さや、ためになる度合いを★の数で採点してあるので、ためになる名回答から読み始めることができます。
★★★★ 名回答
★★★ 面白くて、ためになる
★★ 面白い
★ たっぷりと時間があるときお読みなさい
感想
昭和57年(1982年)松田聖子が「赤いスイートピー」、中森明菜が「少女A」、近藤真彦が「ハイティーン・ブギ」を歌っていたあの時代。SNSもスマホもない時代、この連載は当時の若者の話題の的だったらしい。
今なら全てGoogle先生にぶつけるであろう疑問、珍問、奇問に、Google先生では到底辿り着けないであろう答えが返されているので、名回答からいくつかご紹介。
若禿。
★★★★
Q.僕はまだ十七歳だというのに、すでに額が後退し始めているのです。今では前髪をあげられないところまできました。先生、僕は悩んでいるのです。
A.気にしない。気にしない。気にしない気にしない。気にしない。気にしない。気にしない。キニシナイ!!!
時代は変われど不変の若者の悩み。最後のカタカナに不思議なパワーを感じます。
アル中不安。
★★★★
Q.仕事のストレスをいやすため、毎日のように酒を飲んでます。このままではアル中になるのではと不安で、薄い水割りを飲むようにしてきました。
A.参考までに私の飲み方を申し上げると、ウォッカ、コニャック、何でもかんでもストレートで一口すすり、その後、氷水で舌を洗って冷やし、元に戻してやる。これを繰り返す。そのほうが酒そのものの味が味わえるんだ。一人前の男が水割りなんか飲めるか。——割愛——
もひとつ言っておくと、井戸水が一番うまい。——割愛——井戸水をわきに置いて、ストレートでやりたまえ。
「風に訊け ザ・ラスト」
アル中になるのではないかと不安になり、うすい水割りを飲むようにしているという会社員には、唐突に男の正しい酒の飲み方を指南。さらにミネラル・ウォーターでぼったくるバーの話、井戸水のうまさに話は飛び、着地点は「井戸水をわきに置いて、ストレートでやりたまえ」不安の斜め上をゆく回答ですが、本書はそんなことの連続です。
〈フ〉。
★★★★
Q.僕は童貞、彼女はバージンでした。ごく自然に、ふたりは結ばれました。それはいいのですが、そのときピストン運動するたびに、変な音がするのです。
A.エアーだ。アエロだ。空気なんだ。——割愛——あの音は、一部有識者の間では〈フ〉と呼ばれている。ハヒフヘホのフ。つまり〈へ〉の一歩手前なんだな。肛門から出るのが〈へ〉だけれども——割愛——
「風に訊け ザ・ラスト」
こんな珍問にもしっかり?回答してくれます。
そんな中、今なら炎上必至の恐ろしい回答を発見。
翔ぶ女。
★★★★
Q.僕の彼女は、どうも小賢しい“キャリア・ウーマン”という、私が恐れていた道に踏み込んでしまったようなのです。文豪、私はどうすべきでしょうか。そんな女はこちらから別れてしまうか、強引に殴って従わせるか、哀願するか、それとも…?
A.さっさと諦めろ。殴るまでもない。哀願するまでもない。強姦、レイプするまでもない。どうしたところで君は後悔するだけだ。別れるしかない。——割愛——
「風に訊け ザ・ラスト」
かなり割愛してますが、とても冗談とはとれないほど徹底的にキャリア・ウーマンをディスってます。
いやいやいや、なにこれ、こんなもん出版されていいの?どういう時代?
男尊女卑とか言われてもいまいちピンと来なかったけど、こういう価値観が当たり前の時代が本当にあったんだ。と純粋に驚き、そりゃー、働く女のジャケットにイカつい肩パット入っちゃうね。と80年代ファッションに納得。
そして、20代でこの連載を読んでいた人たちはまだ60代なんだってことに気づく。こんな文章が出版された40年前「オリンピッグ」問題の生みの親のクリエイティブディレクター(27歳)。「女性の多い会議は長くなる」発言の政治家(43歳)。
30代、40代まで浸っていた価値観をアップデートするのってすごく難しいよね。時代の流れに合わせて口にしないだけで、この世代の人たちは心のどこかで働く女性を“小賢しいキャリア・ウーマン”とか思っているのかな、本当は。なんて思ったりした。
私が持っているのは2003年発行第1刷なんだけど、どこかで削除されたりするのかな?
紹介しきれなかったけど、とにかくあらゆる悩み、疑問にGoogleでは見つからない回答を示してくれているので1度パラパラとめくってみることをオススメします。
開高 健
「風に訊け ザ・ラスト」 (集英社文庫)
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