物理学者で随筆家で俳人が、身の回りの現象の不思議や美しさを、知的好奇心と詩的な文章で綴ったエッセイ集
寺田寅彦
「科学者とあたま」
あなたにおすすめ
- 椿の花の落ち方、金平糖の角のできかたを研究した理系男子の頭の中を覗きたい
- 日常を美しい文章で切り取ったエッセイを読みたい
- 寺田虎彦・吉村冬彦が好き
- 夏目漱石ファン
こんな本
物理学者、随筆家、俳人、大学教授と複数の肩書きを持ち、19のペンネームを使い分けていた男のエッセイです。
椿の花の落ちかた、金平糖の角のできかたなど、日常の身の回りで起こる物理現象を研究。また、夏目漱石に俳句を教わり、バイオリンを弾き、絵画制作にいそしむ。
そんな男が、線香花火の燃えかたを、東京の涼しさなどを、どのように捉え何を感じるのか美しい文章で綴っています。
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感想
一番最初の「線香花火」の1ページ目を読んだ時点で、
あっ、なんか違う。今まで読んだエッセイとちょっと違う。と思った。
空間や時間の捉え方、現象の感じ方、世界の描写が、今まで出会ったことのないタイプのエッセイだった。物理学者というものはこういう風に世界を捉えるのか。と驚いた。
しかも、ただお堅い文章というわけでもない。
例えば、線香花火に点火してからの描写はこんな
小さな焔がボタンの花弁のように放出され、その反動で全体は振り子のように揺動する。同時に灼熱された熔融塊の球がだんだんに成長して行く。焔が止んで次の火花のフェーズに移るまでの短い小休期がまた名状し難い心持を与えるのである。火の球は、かすかな、ものの沸えたぎるような音を立てながら細かく震動している。それは今にも迸ばしり出ようとする勢力が内部に渦巻いている事を感じさせる。
「科学者とあたま」
その後の線香花火の火花を音楽に例え、チャイコフスキーのパセティクシンフォニーを想い出したかと思うと、近代の花火のアルミニウムだか、マグネシウムだか、ストロンチウムだか、リチウムだかの焔の閃光の無作法な燃えかたを批判したりする。
情緒的で詩的な文章と、物理学者の現象への興味とが交互に現れる。初めて知る世界の捉え方だった。
他にも魅力的なエッセイが満載
宇宙線
例えば頭蓋骨だけでも毎分二、三百発、一昼夜にすれば数十万発の微小な弾丸で射通されている。
それだのに、可笑しいことには、我々はそんなことは全く夢にも知らずに平気ですましていられるのである。読書の今昔
読書の選択やまた読書の仕方について学生たちから質問を受けたことが度々ある。
これに対する自分の答えはいつも不得要領に終わる外なかった。
いかなる人にいかなる恋をしたらいいかと聞かれるのと大した相違はないような気がする。
時にはこんな返答をすることもある。
「自分で一番読みたいと思う本をその興味の続く限り読む。そして嫌になったら途中でもかまわず投げ出して、また次に読みたくなったものを読んだらいいでしょう。」
大根が食いたくなる時はきっと自分の身体が大根の中のあるヴィタミン・エッキスを要求しているのであろう。その時我々は何も大根を食うことの必然性を証明した後でなければそれを食っていけないわけのものではない。間違いだらけで恐ろしく有益な本もあれば、どこも間違いがなくてそうしてただ間違っていないというだけのこと以外に何の取り柄もないと思われる本もある。
「科学者とあたま」
ちなみに著者は、夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の水島寒月。「三四郎」の野々宮宗八のモデルと言われている。漱石ファンもぜひ。
寺田寅彦
「科学者とあたま」
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