誰かに迷惑をかけたり、なーんか上手くいかないことが続いて、俺って“クズかも”そう思って落ち込んだり、同年代の偉い人たちと自分を比べて悲しくなったり、そんな時に読んでほしい。同年代の偉い人はたくさんいるけど、偉くない人はもっとたくさんいる。この本はそんな偉くない人たち、もっというと愚かで、小物で、ロクでもない人たちに焦点を当てたエッセイ集。
東海林さだお
「誰だってズルしたい!」
本書は著者が世の中にはびこる小ズル、中ズル、大ズルを暴き出しては憤り、真剣に江ノ島の正道観光ルートを巡り、清水すしミュージアムを堪能し、「最後の晩餐」を考える、つまり
なんでもありのエッセイ集です。
冒頭では、50ページ近くを費やしてありとあらゆるズルを暴き出しています。皆さんよくご存知のズルから、よく考えればズル、もしかしてズル、親切で清々しい行為に擬態しているズルまで、もうこの世にズルをしていない奴はいないんじゃないかと思うほど。
そこに描かれるセコイ奴らの羅列を読んでいると真面目に生きているのがバカらしくなり、
結構自分は誠実な人間なんじゃないかと錯覚し、
ときどき自分にも当てはまるズルに出会いドッキッ!とする。
あらゆるズルの中で言われてみればズルだなと思った、真似できるようになるにはもう少し鍛錬が必要そうなオバズルを紹介。
電車に乗り込んできた4人のオバサン、空席は2席、仕方なく2人はつり革につかまることに。
次の駅でつり革2名の後ろの席、すなわち座った2名の目の前の席が1つ空く。
東海林さだお「誰だってズルしたい!」
その瞬間、座った2名のオバサンが同時に発したスルドイ声が車内に響きわたる。
「そこ空いたわよッ」
その空いた席の前には、1人の紳士がつり革につかまって立っていて、いままさにその空いた席に座ろうとした瞬間でもあった。
ーーーー割愛ーーーー
ふつうに考えれば、誰が考えたって紳士のほうに優先権があるのは明白である。
単なる声なんかで、その優先権は失われるものではない。
だが、オバサンたち4名で作ったこの場のルールが、この常識を見事に覆したのである。
堂々として威厳に満ち、生き生きとして疑いのないオバサンたちの行為が、本来ならばズルくてズーズーしい行為を、親切で清々しい行為に変換させてしまったのだ。
読めば読むほど、他人のズルに目ざとくなりそう。
自分のダメなところに気づいたら、修正方法を教えてくれるビジネス書なんか読んだりすれば世界は少しづつ改善するんだろうけど。。。みんなそれぞれ種類の違うダメを持って生まれてきたって開き直る日があってもいいじゃない。そう思わせてくれる本書。ぜひ。