「なんだよ、なんなんだよお前ら。」冒頭数ページで何度も思った。2人の少年の賢さと冷徹さに、淡々とこなす悪事の数々に。さらに、これが児童書というジャンルに属していることを知って驚いた。こんなもん子供に読ませていいのか?トラウマ必至の読書体験。

アゴタ・クリストフ
「悪童日記」

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あらすじ

 物語は第二次世界大戦末期から戦後にかけて、舞台のモデルとなったのはハンガリーのオーストリア国境近くの町、クーセグと言われている。

 都会から田舎町に疎開してきた双子の少年が主人公。

 本書はおばあちゃんの家での過酷な生活の中で、自学自習、労働を覚え、そして驚異のスピードでたくましく、したたかに、冷酷に生き延びる術を習得していく2人の日記。

異常に賢くて魅力的な2人の主人公

 おばあちゃんの家では仕事を手伝わなければ家に入れてもらえないし、食事も与えられない。2人は当初おばあちゃんに従うことを拒否し、庭で眠り果物を食べて過ごしていた。

 そんな2人が働き始めたある日の食卓での会話。

「お前たちにもわかったようじゃな。宿と飯にありつくには、それだけのことをしなくちゃならん」
ぼくらは言う。
「そう言うわけじゃないよ。仕事は辛いけど、誰かが働いているのを何もしないでみているのはもっと辛いんだ。ことに、その働いている人が年寄りだとね」
おばあちゃんは薄笑いを浮かべる。
「雌犬の子め!お前たち、わしに同情したって言いたいのかい?」
「違うよ、おばあちゃん。ぼくらはただ、ぼくら自身のことを恥ずかしいと思ったんだ」

アゴタ・クリストフ
「悪童日記」

なんなの、この子達?って思うよね。賢すぎない?

 本書はそんな2人がお互いに課題を出し合い、添削しあった作文で構成されている。すごく読みやすいけど、とにかくドライ。

 その正体は作中で明かされる作文のルール

「〈小さな町〉は美しい」と書くことは禁じられている。なぜなら、〈小さな町〉は、僕らの目に美しく映り、それでいてほかの誰かの目には醜く映るのかもしれないから。
—-割愛—-
「僕らはくるみの実をたくさん食べる」とは書くだろうが、「僕らはくるみの実が好きだ」とは書くまい、「好き」という言葉は精確さと客観性に欠けていて、確かな言葉ではないからだ。
—-割愛—-
感情を定義する言葉は漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。

アゴタ・クリストフ
「悪童日記」

 作文の内容は真実でなければならない。を徹底するために安易なラベリングを避けて無駄な装飾、内面描写が一切ない。

 固有名詞を排除しているからこそ、“僕たち”の目には皆が一つの街に住む同じ人間として存在し、それゆえあらゆる不条理な出来事から目に見えない境界線が浮き彫りになる。

 例えば、
「もうすぐここを発つから」と、2人に自暴自棄になりながな店の商品をなんでも持って行っていいと言う靴屋の主人。
 借収容所に積み上げられた屍の山。
 家畜のように牽かれて行く人間たちの群れ。

 歴史の教科書的に言えば、靴屋は「ユダヤ人」であり、屍の山は「ナチスによるジェノサイドの犠牲者」であり、牽かれて行く人たちは「強制収容所へ大量連行されたユダヤ人の列」なんだけど、

 2人が住む街で起こる、理解できない不条理な出来事として描写される。

人種、国籍、職種、階級、貧富。目に見えない境界線を感じ。暴力、恐喝、略奪、あらゆる犯罪を犯してたくましくなっていく2人。

 読みはじめこそ、とめどなくエスカレートする2人の冷徹な犯罪行為の数々に引くと思います。が、

 不思議なことにラストシーンでは“どうかこのまま冷徹な2人でいてくれ”と願うことになります。

 “こんなこと”でこれまでの2人が徹底してきた姿勢を崩さないでくれ。。。と。

 子供に読ませるかどうかは置いといて、文句なしに面白いです。

 田舎のおばあちゃんの家で綴られた少年たちの日記と聞けば、夏休みの絵日記のような「のほほんスローライフ」をイメージしちゃうけど、そんなものとは無縁でした。

不条理にあふれた時代をサバイブする激しい一冊です。ぜひ。

アゴタ・クリストフ
「悪童日記」

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